本研究室の研究対象は,製品の製造,荷物の運搬,顧客へのサービス提供などの機能を担うシステム,すなわち広い意味での「生産システム」です.こうしたシステムでは,一般に,複数の人と機械が分業しながら,製造,運搬,サービス提供などの機能を果たしています.
生産システムには,作業を担う人や機械,作業の対象となる製品や荷物,サービスを受ける顧客など,膨大な数の要素が関わるため,それが稼働している際に,実際には,誰ひとりその全体的な挙動を隅々まで把握したり,指揮したりしているわけではありません.
それなのに,何故かうまく動いている.不思議だと思いませんか?
それは,うまく動かすための「仕組み」がシステム自体に埋め込まれているからだと言えるでしょう.一般に,この仕組みは,ある部分の動きは計算機によって機械的に定め,また別のある部分の動きは人の柔軟かつ自律的な判断に委ねるという具合になっています.
すなわち,生産システムは「複数の人と機械(計算機)の知的協働」によって動いているということになります.本研究室では,この生産システムを動かす「仕組み」の解明や考案,支援手法の開発を目指して研究を行っています.
本研究室で取り組んでいる具体的な研究テーマのほとんどは大まかに下の4つに分類できます.
生産・物流システムを動かすための運用の意思決定(作業の順序付けや搬送ルートの決定など)に注目し,その質の安定化や向上を目指しています.もし自動化するのであれば,よりよいアルゴリズムを考案すること,人手に委ねるのであれば,意思決定の質を左右する要因を解明することや,効果的な支援手法を開発すること,などが課題です.大手物流機器メーカーとの共同研究など,社会実装を意識した研究に取り組んでいます.
サービス提供の場は,提供者,受容者ら,複数の主体が影響し合う複雑なエコシステムです.そこでは,それらの主体にもたらされる価値の総和,すなわち,社会的余剰をできるだけ大きくすることが望まれます.各主体の振舞いを外から指定することはできないため,それぞれが自分の目的や好みに基づいて自律的に行動した結果として,全体としての望ましい状態が実現されるような仕組み(サービスメカニズム)の設計が課題となります.
食の流通過程で生じる環境負荷を抑制し,食品サプライチェーンの持続可能性を確保することが急務です.そのために,サプライチェーンをどのように変革していけばよいかについて研究しています.具体的には,日本の厳しい納品期限が食品廃棄に及ぼす影響,日米のレタスサプライチェーンの構造の違いとその市場や環境への影響,飲食店間の在庫横持ちによる食品廃棄削減効果,などをシミュレーションやゲーム理論を用いて数理的に解明しています.
環境に優しい「持続可能な農業」を実現するために,生産者と消費者,あるいは,生産者同士が協力し合う協働型農業コミュニティ(CAC)の可能性を探求します.具体的には,農機や農地,労働力などのシェアリング,消費者による予約購入や共同生産計画,などを実現する協働の仕組み(協働メカニズム)の設計が課題です.ゲーム理論やメカニズムデザインなどの数理技術を駆使し,現場で役立つ仕組みづくりに挑戦します.
これら以外に,シミュレーションモデリングや統計的モデリング,それらに基づく最適化などにも取り組んでいます.